漫画と映画とアイドルと…

ただひたすらにひとりごと

藤子不二雄

生まれて初めて「漫画家」を意識したのは藤子不二雄先生だった。と、自分の漫画読み人生を振り返るとそう思う。

ドラえもんに始まり、オバQ、怪物くんにハットリくんパーマンプロゴルファー猿と、藤子不二雄劇場?藤子不二雄ワイド?だったか、怒涛のように藤子アニメが放映されていた80年代に小学生だったので、ごくごく自然に藤子アニメを見て藤子漫画を読んでいった。

TVアニメと共に単行本サイズの週刊本藤子不二雄ランドも刊行される。これがなんと毎週毎週、藤子漫画が発売されるという、要するに藤子不二雄全集な企画の本で、しかも新作漫画のウルトラB(A先生)やチンプイ(F先生)も連載して、セル画もオマケに付くという、今考えてもやっぱりとんでもない企画だった。スゴいよなぁ。それだけで藤子不二雄先生の偉大さがわかる。

しかしこの藤子不二雄ランド、小学生の身分では到底集めきれるものではなかったのだが。

(でもこのおかげでシルバークロスやまんが道に出会えたのだ)

そしてまんが道トキワ荘を知り、数々の漫画家を知り、手塚治虫にたどり着くという、漫画の歴史のお手本のような経験をし、そこから更に水木しげる楳図かずお永井豪、と私の漫画世界はどんどん広がってった。

当然コロコロコミックも読み、ボンボン、100点コミック、高学年になるとジャンプ、サンデー、マガジンと当たり前に始まった漫画読み人生。

漫画の世界を教えてくれたのは藤子不二雄先生だった。と言っても過言ではない。


F先生が早世された時も大変驚いたのだが、今回のA先生の訃報を聞き、これで本当に藤子不二雄がいなくなってしまったんだという事を痛感、同時にそう感じた事にとてもショックを受けている。

やはり藤子不二雄とは、お2人で藤子不二雄だったんだなと。当たり前なのだが深く、深くそう思った。

本当に心からご冥福をお祈りいたします。


偉大な漫画家がお亡くなりになってから、あらためてその功績を振り返る、という経験が年々増えていくのが歳を取る事のツラいところだ。

A先生は晩年遊び人としてのカッコよさを発揮しておられたが、漫画の面白さは当然、その面白大人な一面もカッコよくオモシロかった。

F先生は私生活が謎な部分もあって、ものすごく真面目な人って印象が強く、敬遠したくなる時期もあったりした。

とはいえ、ドラえもんから藤子ワールドに入った身としては子供の頃はA先生の絵柄が苦手だったりもした。

どんだけ藤子不二雄先生の間を行ったり来たりするのか、オレのまんが読み道。

今は当然お二人とも大好きだが。


思えばウルトラBの頃の、ある種完成されたディフォルメというか、記号的な少し固く見えるキャラクターがぎこちなく感じて苦手だったのだろう。

あとF先生に比べて女の子が可愛くないなと思ってた(笑)

余談だが、しずかちゃんに始まり1番かわいいのはエスパー魔美!!!佐倉魔美!!!エスパーおマミ!!!と言い切れるほど、F先生の描く女の子には幼少の頃に刷り込まれた性癖と言えるくらい私の女性の好みのタイプに影響している。

そして余談の余談だが高校生の頃友人に、「○○さんは鼻筋がとても可愛い」(魔美の様なF先生の描く可愛いお鼻だった○○さん)と言うと「鼻がかわいいってなんやねんそれ」と言われ全く理解されなかった事を思い出す。

そこから手塚的絵柄の流れからのエロを体現した吾妻ひでお先生や、F先生の選び抜かれた描線でシンプルなのに可愛い。を受け継いでいると思ってる望月ミネタロウ先生など、ワタシの性癖は漫画に多大なる影響を受けている。

が、それはまた別の話でホントーに余談の余談で大余談だ。


まぁともかくA先生の絵柄が苦手だなぁと思っていた若輩者だった私。

しかし大人になるにつれA先生の絵に魅力を感じるようになる。きっかけはやはりアニメ化からの再評価で大ヒットした「笑ゥせぇるすまん」だろう。

原作漫画は主に1969〜71年に描かれたものだが、およそ50年後である今でも通用する、人間の欲望や見栄や願望を皮肉をまじえて描いた傑作である。

89年にアニメ化され知名度を上げ、96年には「帰ッテキタせぇるすまん」その後「踊ルせぇるすまん」と何度も改題して不定期連載されるほどA先生の人気作品となった。

この「笑ゥせぇるすまん」のおかげでA先生のブラックユーモア短編集にも出会えた。

藤子不二雄両先生は短編でも力を発揮される。

超おもしろい。

F先生のドラえもんに通じるSF(すこしフシギ)を発展させたSF作品も素晴らしいのだが、A先生の人、人間、のもつマニアックな個性、極めて個人的である作品も大変面白い。


A先生の魅力は、やはり"俗"なところだろう。

風俗、俗世間、俗物、とあまりいい意味では使われない言葉だが、本来は古くからの習わし、ありふれた、普通、という意味を持った誰にでも共通する感覚の言葉なのだ。

「笑ゥせえるすまん」「魔太郎が来る‼︎」などのダークな雰囲気の漫画は時代を越える共感を呼ぶ。つまるところ人間って全く進歩しないし愚かだよなぁ、世の中って基本的にクソだよなぁって事をよくわからせてくれる。人間なんてそんなもの。人間なんてラララ。

そんなこんなの人のいとなみのおかしみを漫画にしているA先生の作品群はいつの時代に読んでも当たり前に面白いのであった。



A先生の作品で1番好きなのは「怪物くん」かなぁ。まずタイトルがかわいいし。

怪物!に「くん」をつけるセンス。

怪物太郎という秒で考えたような名前も素晴らしい。ドラキュラ、フランケン、狼男とユニバーサルモンスターも怪物くんから学びました。

そんな 怪物達の起こすドタバタギャグってのが基本なんだけど、ダークな作品と同じ様な日陰者に対するA先生の優しい目線を感じるところがとても好きな作品だ。

絵柄も60年代頃のA先生独特の、いかにも漫画!している表現がオモシロかわいい。

先生の絵はこの60年代〜70年初期が1番好み。もちろんどの年代の絵も大好きなのだが。


子供の頃から当たり前のようにそばにある藤子不二雄先生の漫画。まだ読んだことのない作品もたくさんある。

ひとまずはありがとうございました!!

これからも楽しませて頂きます。